山下泰平の趣味の方法

これは趣味について考えるブログです

Kindle Unlimited で学習するコツ

無料で消費できるコンテンツには、上手に付き合うコツのようなものがあると思う。

国立国会図書館デジタルコレクションでは、現時点で三十六万件の資料(図書)を無料で読むことが可能だ。私は国デジのヘビーユーザーで、これまでに読んだ資料を古書として購入したとすると、おそらく数千万円程度になるはずだ。読みまくることで、それなりの成果も上げることができた。もっとも国デジが登場した当初は、膨大な数の資料を前にしてどう使っていいのかと困惑した。それでも使用するうちにコツがわかってきて、十年以上利用している。

もうひとつメジャーな読み放題のサービスが Kindle Unlimited で200万冊以上の書籍が読み放題だ。こちらはずっと以前に契約し、使うのにちょっとコツがいるなと感じたものの、やがて飽きてしまい解約してしまった。

年始に時間があったため、ちょっと色々と学習することにして、どうするのが効率的でコストがかからないのかなと考えた結果、再び Kindle Unlimited を利用することにした。前回はすぐ飽きたので、今回はちょっと真面目に考えながら使ってみた。確かに安価に効率よく学ぶための良いツールではあったものの、上手く使うためにはちょっとした技術がいるように感じられたので Kindle Unlimited で学習するコツを書いていきたい。

基本の方針

エンタメなどを普通に楽しんでいる人や知的な作業に慣れてる人はそれでいいんだけど、私のようにちょっと思い立って Kindle Unlimited を学習に使おうという人は、次のようなことを意識しておいたら良いと思う。

本の選び方

Kindle Unlimited には大量の本が登録されていて、検索する時に次の画像のようにフィルタリングをかけると読み放題の本だけが出てくる。

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数が多く読みなれていない人は本を選ぶのが大変だと思うので、基本的なコツを書いておく。

  • 著者に実績がある
  • 出版社が出している
  • 翻訳本は基本的には良い

私も本を書いたりするので自分の立場が危うくなるのだが、基本的には実績のある人の本を読むのが良い。著者の名前を検索してみるとかでいい。ただ本業が超忙しい人が書いた本の質が高いのかとか、超有名人の本が良い作品なのか、一年に何冊も出している人の本はどうなのかっていうと微妙なところではあるけど、そういうのは読むうちに分かってくるんで、とりあえず実績のある人の本を選ぶようにしたらいいと思う。

質が悪くてもなんの問題なく販売できるのが Kindle Unlimited の仕組みなので、個人出版は避けたほうがいいと思う。出版社が出しているものは、基本的に編集されているので異常に質が低いものは少ない。失敗を減らすための良い基準だと思う。ちなみに私も遊びで Kindle 本を出しているのでこういうことを書くのは微妙なんだけど、事実は事実なのでこうですとしか言い様がないといった感じである。

そして翻訳書も失敗する可能性が低い。翻訳されているという時点で一定以上の評価を得ているからだ。

ただ Kindle Unlimited は選択肢があるようでないといった雰囲気もあるので、最終的には気が向いたものを読むみたいになってしまうと思う。

効率の良い読み方

読み放題のメリットは選び放題になるところでもある。だからそれほど好みではないものを、最期まで読む必要はない。あまり面白くないと思ったら、すぐに読むの止めて新しいものを探したほうがいい。面白いものを選ぶ労力をかけないのであれば、きっちり批評され評価が出ているものを購入し、しっかりと楽しんだほうが良いと思う。

資格取得のために利用するのも微妙だと思う。質の良い本で学習したほうが合格する確率は上がるので、たかだか数千円をケチる意味はない。

効率の良い学び方

ようやく Kindle Unlimited で学ぶ方法コツである。私は次のような存在を Kindle Unlimited で学習することにした。

  • 質が悪くなりようがないもの
  • 目的が曖昧すぎるのでなんでもいいもの
  • 雑に大量に読む必要があるもの

こういったものを対象とする学習だと Kindle Unlimited を使い低コストで効率良く学ぶことができた。少し分かりにくいと思うので、実際になにをどうやったのか具体例を上げながら解説していく。

お金のことを学習した

世の中の変化が色々あって、今年はお金ときちんとつきあうことにした。これまでもお金はあればあるほど良いとは思ってたけど、数字がデカければデカいほど良いくらいの認識だ。そんなわけで、ちょっと勉強することにした。

ちなみに大昔に貨幣論や国富論くらいは読んだことがあって、私はそういった本が好きなんだけど、実利的な効果はあんまりなかったと思う。ものすごい頭が良いなら別なのだろうが、少なくとも私にはそういった能力はない。なので今回はもっと実利的なもので学んだほうが良さそうだなと思った。

というわけで学習するわけだけど、まずは方針を決めることにした。

目標はなにもしないよりはマシなくらい。今までよりマシになるわけだから、それで良いでしょうといったところだ。

次に自分がお金に関してかけられる時間を決めた。これは1年に5時間くらい。つまりできることはほどんどないわけで、勉強にかける時間も少なくていいという結論を出すことができる。逆にその程度の時間で、できることがないならしないことにした。

たいしたことはできないので、勉強する期間は1日とした。とにかく時間や労力をかけたくないといった感じである。

ネット証券に登録した

Kindle Unlimited から離れてしまうけど、実利的なものだから実際にやれないと意味がないので、まずはネット証券に登録した。大きい会社で手数料が少ないものならなんでもいいと思う。

まだ読んでいないので、そもそもネット証券を使うのか、郵便貯金はどうなのか……などといった疑問もあったが、結果的に使う感じだったので良かった。

Kindle Unlimited で読むことにした

そんな高度なことをするわけでもないので、簡単なお金の運用方法が書かれている本を3冊程度読めばいいかなと判断した。そういった内容の書籍は、だいたい1冊1000-1500円くらいなので Kindle Unlimited に登録することにした。私は本にお金を払うのに抵抗はないんだけど、実利的な内容なんだからコンテンツの質にそんなに差異がないだろうといった推測で、三冊読むなら Kindle Unlimited のほうがお得だなといった判断である。なんでお金に関する興味も知識もないのにそんなことが推測ができるのかというと、お金にかける時間を1年に5時間くらいとしているからで、その程度の時間でできることは極々単純な内容になる。そこに大きな差異が出るはずがない。つまり『質が悪くなりようがないもの』である。

加えて暴力大将が読み放題の大将となっていたことも大きな理由であった。

誰に向けた表紙なのかといった疑問もあるが、暴力大将はとにかく面白いという噂を聞いていて、一度は読んでみたいとは思っていたのだが手にとる機会がなかった。これを機会に絶対に暴力大将を読むわけだが、暴力大将を読み始めると金のこと調べる気がなくなるので先に金の本を読むことにして、Kindle Unlimited に登録して"金"で検索し適当に何冊か読んだ。

私は本をよく読むほうなので、だいたいこういうのが必要かなということが感覚的に分かる。実際に選んだのは次の三冊で、参考までに選んだ理由と軽い解説もしておく。

世界を見てきた投資のプロ

選んだ理由

  • プロの人が書いてる
  • 最近出ているから情報が新しい(はず)
  • レビューの評価が高い

内容

  • 投資への抵抗をなくす(人的資産は誰もがもってるなど)
  • 金融資産を分配する(日本だけ対象にするのは危険的な話)
  • これに書いてあることしたら良さそう

これだけでだいたい分かったけど、あと二冊読むことにした。

難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!

選んだ理由

  • 読みやすそう
  • 上の本より扱ってる内容が広そう
  • レビューの評価が高い

内容

  • お金をどうしたらいいのかが書いてある
  • これに書いてある通りにしたら良さそう
  • 上の本より具体的な内容だと思う

これだけ読んで納得できるなら、これだけで良いと思う。

世界のお金持ちが実践するお金の増

選んだ理由

  • 売れてるっぽい
  • 上の二冊とはちょっと毛色が違う
  • 気が向いたので

内容

  • 色々なことが書いてある
  • 最近の事情やら予測なんかも書かれている

ちょっと適当に選びすぎた。この本に書かれているものの中で気になるものがあったら、別のもので勉強する感じの構成で、これ単体で突っ込んでいったらヤバそうな気はしないでもない。私の目的だとそれほど役に立たなかったけど、知ってて損することでもないといった感想だった。

全体的な感想

3分の2の割合で今の私にとって役立つ本を選べたのは良かった。読むのに時間がかかるかなって思ってたんだけど、平易に書かれていたのですぐ読めた。個人的にお金を払って読むのであれば、まず選ばないような書籍ばかりなので、かなり新鮮であった。価値観が違う人たちの書いたものなので、単純に読むのが面白いっていうのもあったと思う。たまに出てくる書いてる人の感想みたいなのが、異常に面白く感じられる。そういうものを読むためにあと何冊か読みたくなったが、それはまた別の話になってしまうので止めておいた。

分かったこと

  • そんな難しくない
  • リスクの高くないやり方もある
  • フェーズによってやり方は変るので数年後に勉強する必要がある
  • 面倒くさいけど一生お金とつきあってく必要はある

知ってるっていえば誰もが知ってるようなことだけど、私にとっては十分満足で いる結果であった。というわけでお金の勉強は1日で終った。

地理をもうちょっと学ぶ

せっかくなのでもうちょいなにか学ぶことにした。ついこの間まで、私は地名だとか場所に一切興味がなかった。ところが旅行に関する文化を調べることになり、ちょっとマズいなと感じ日本の都道府県の場所だけを暗記した。こんなもんでいいかと納得していたんだけど、もうちょっと詳しくなっておいたほうが良いかなと思い、この機会に学習しておくことにした。

別に試験を受けるわけではないので、地名を見るとなんとなく頭になにかが浮かぶ程度で十分である。というわけで次のような方針で学習することにした。

  • 対象としている年齢層を広めに取り、異なる内容の書籍を読む
  • 記憶を定着させるために雑多な知識が書かれているものを何冊か読む
  • イメージを持っておきたいのでビジュアルが掲載されているものを選ぶ

ようするに『目的が曖昧すぎるのでなんでもいいもの』であり、『雑に大量に読む必要があるもの』である。

Kindle Unlimited の同時貸出数の上限は20冊なので、まずは20冊を選ぶ。ポイントはちょっとでも興味があったらジャンジャン登録していくことで、結果的にこういう感じになった。(一部、以前に購入した有料のものあり)

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当然あんまりっていう本もあって、それは読まない。別の本を読む。読むか読まないかの判断は難しいところだけど、読みにくいし読まない程度でいい。読むものがなくなったら、また別の本を探す。適当に大量に購入して気に入らなきゃ読まないっていう方法で、これを紙の本でやるとかなりお金がかかってしまう。だから昔だとこういうやり方は、よほど本が好きな人じゃないとしかなった。図書館でやるものありだけど、ちょっと自由度が下がって面倒くさい。しかし今なら誰もが簡単にこういう体験が出来る。

ただ弱点もあって Kindle 本は多読や乱読にはあんまり向いてない。私は明治の資料を読む際には5-10冊、多いと20冊くらいを併読するんだけど、そういうことは Kindle ではできない。また macOS 用のアプリの性能が悪いというのもある。スマホで読むと疲れるのでパソコンで読んだんだけど、ページめくりが遅くてかなりストレスであった。このあたりは選択肢がないので仕方ないと諦めるしかない。

知識の量を増やすという意味では、こういった読書はあまり効果はないんだけど、自分が好きな部分が分かるっていう効果がある。私は地理にそれほど興味を持っていないわけだけど、もしかしたらものすごい興味がわくツボのようなものがどこかにあるかもしれない。どのジャンルでもこういうことはあるもので、歴史の勉強をしたいと思ったとして、歴史ってのはものすごい範囲が広い。そのどこの部分が好きになるのか知るためには、雑に多くの知識に触れるしかない。そういった目的で Kindle Unlimited を使用するのはかなり効果的だと思う。

ついでに本に読みなれていない人がこういうことをすると、とても良いトレーニングになる。私は以前に読書のコツのようなのを書たんだけど、これはそこで紹介している方法でもある。

読まない人が読書で遊ぶための60ステップ - 山下泰平の趣味の方法

こういうことを一週間くらい続けるうち、地理への興味と知識が増して、地名を見るとなにか思うようになれた。なんとなく気になってるけど、全然知識がないってことが出てきたら、またこういう方法で学ぶと思う。関係ないけど高校生や大学生のころにはこういうことを頻繁にしてたので、懐しい気分になれたのも良かった。

ついでに

年明けに免許の更新を忘れていて、失効していることに気付いたので、免許センターに行った。せっかくなので移動中に運転の仕方を思い出すかーと思い免許っぽい本を読んだ。

こちらは個人出版なんだけど読みやすかった。このように適当に本を選んで雑に読めるのは Kindle Unlimited の良いところだと思う。そうこうするうちに、暴力大将はなんかどうでもよくなってきたのでまだ読んでいない。

まとめ

久々に新しい知識を導入することができて面白かった。ここ10年以上は古い本ばかり読んでいたんだけど、新しい本は分かりやすくて良いなといった感想でもあった。地理でやったようなことは正直なところかなり疲れるんだけど、地名が出てくるとボヤーっとイメージがわくようになったのは面白すぎた。星座や動物、植物などで同じことしても良さそうなので、機会があったらやってみようと思う。

面白いなと思うのが、私は音楽や映像関連のサブスクリプションサービスでは、なにも出来ないっていう点だ。私は音楽も映像作品にもほとんど触れずに成長してきたので、無限のコンテンツがあるとなにを楽しんでいいのやらまったく分からなくなってしまう。本は慣れてるから、だいたいこういう感じってことが分かるんだろうと思う。