山下泰平の趣味の方法

これは趣味について考えるブログです

趣味の種類について

趣味にはパッケージ化されているものと、そうではないものがある。

あなたの趣味はなんですかと質問され、一言で答えることができるのがパッケージ化された趣味、答えられないのがそうじゃない趣味です。スキーが趣味なら趣味はスキーですと一言で答えることが出来るけど、木材の木目に針を指すのが趣味の人は、なかなか説明に苦労する。

釣だとかのパッケージ化された趣味は、始めようと思えば始めることができる。お金と暇がいるけれど、特に考える必要はない。上達するための定石も用意されている。人との会話でも困らない。

パッケージ化されていない趣味について他人に話そうとすると、まず趣味として認めてもらう必要がある。いきなりビニール袋にゼリーを充満させる醍醐味について語り出すと、異常者だと思われる可能性がある。

なぜ異常者だと思われるのか説明すると、パッケージ化されていない趣味というのは基本的に社会的な評価がないからである。社会的に価値がないというのは、なかなか説明が難しい。

私の趣味は文字を読むことで、最近は明治時代を中心に読んでいる。で、わりと発見みたいなのがある。だけどこういう発見には、社会的な価値がない。例えば1900年あたりの日本では、ビールの栓抜きのことをコップ抜きと呼んでいる。栓抜きといってもその当時は王冠がなくコルクで閉じていたから、コップ抜きというのはコルクスクリューのことだと推測できる。ビール関連の知識だとビールの上のほうをブチ割って開ける軍人式と呼ばれる開け方があったり、ガラスのコップがない家では湯呑みでビールを飲んだりだとか、その当時からグーッと一口で飲まないとビールの味は分からないとされていたなどといったことを知ってるのだが、こんなこと知ってても未加工だと一人で楽しむことにしか使えない。

この情報を他人と一緒に楽しもうとすると、まずこれに社会的な価値を付け加える作業が必要になる。だから自分で趣味として成り立つように育てなくてはならない。パッケージ化されていない趣味を育てていくのは、かなり面倒くさいが実は良い点も多い。だからこのブログでは、主としてパッケージ化されていない趣味を扱っている。