山下泰平の趣味の方法

これは趣味について考えるブログです

月が奇麗ですねが面倒くさい人向け明治の "I love you"

漱石が "I love you" を月が奇麗ですねって訳したって話があるけど、回りくどくて面倒くさいよな。明治の日本人は我君を愛すとか言わないだろって感じなのだろうが、明治の奴らは基本的に焦ってるため、愛とか恋とか細かいことを気にしてる暇はない。それならどうなるとかというと、こうである。

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わたくしの妻になってください。

明治の中頃にもなると、性的な部分で潔白な態度というものが求められつつあった。そんなわけで、少しだけ知的な人が読む娯楽作品の世界では、『恋が成就する=結婚』ってルールがあった。例外もあるけど、だいたいそういう感じである。それゆえに『 "I love you" =わたしの妻になってください』が成り立つというわけだ。

でもいきなり結婚とか厳しいよな今は平成だしっていう意見もあると思われる。そもそも今のところは、同性同士だと結婚できないとか色々な問題もあったりする。そういう場合に使える明治っぽい "I love you" はって考えると、こういう感じのものがある。

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抱いて見ようか、半円札の一枚も遣ったら可(よ)かろう

これは粗雑な奴らが読む娯楽作品に出てくる台詞である。半円は現在の貨幣価値で12500円くらい。金払ったらいいだろという男らしい態度だ。しかしなんでもかんでも金払ったらいいだろといった発言は、時に人へ嫌悪感を与えることがある。そもそも恋愛に金が混じるのはどうかなって人もいることだろう。そんなもっと自分の気持に素直になりたい人なら、こんな "I love you" はどうだろうか?

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サア一緒に寝ろ、

自分の気持に正直になっていて、実に好感が持てる。だけどせっかく勇気を出して、一緒に寝ろって伝えたとしても、この人は暗い所が恐いのかな? 大人のくせに弱虫なのだろうかって思われるかもしれない。どうせなら、もっと男らしくさらに粗雑な "I love you" を使いたいといったところで、こういうものもある。

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乳を吸ったって宜(よ)いじゃァないか

ここまで辿り着けたら人間として完成品で、もう人格荒削りすぎて恋とか愛とかどうでもいいみたいな雰囲気となり、"I love you" は消滅し翻訳しなくて済むし、めでたしめでたしといったところであろう。

ところで漱石が "I love you" を月が奇麗ですねって翻訳したって話なんですけど、私も全集の言行録かなにかで読んだことがあるような気がしないでもない。ただし、記憶が曖昧でよく分からない。ありえるならば、シェークスピアを教えてた東大の頃な気がする。だけど一高の学生が、月が奇麗ですね云々っていうのを書き残していたような気がしないでもないというわけで、興味のある人はこの辺りを調べてみると良いかもしれないですね。