山下泰平の趣味の方法

これは趣味について考えるブログです

私の日本すごい

日本はすごいんだみたいな人は基本的に知識人みたいな人から馬鹿にされているけど、よくない事だと思う。すごいって思いたいんだから、すごいところを教えてあげればよいのでは? 馬鹿にされたらムカつくのは当然で、毎日大喧嘩になるのも当然だと思う。

それで私の思う「日本すごい」は以下の三点、これらはまがりなりにも近代化に成功した一因で、守るべき伝統だと考えている。

  • 迷信打破と合理性の追求
  • 平等主義
  • 無駄な熱狂、過剰な反応

平等主義より平民主義のほうがより正確なんだけど、平民主義を使うと伝わりにくくなる可能性が高いので、平等主義としている。この三点を普通に解説するとものすごく長くなるので、代わりにわかりやすい事例を出す。

まずは早起き、戦前の日本では何度か早起きがブームになっている。

労働時間が長ければ生産性が上った時代には、早く起きて仕事をするというのはよいやり方だった。もうひとつ、近代化のために必要な、時間に合わせて行動するという様式の普及にも、早起きは貢献した。この現象で上の三点がどう作用したのか。

「無駄な熱狂」によって、朝の3時にラッパを吹いて近所の人を全員起こす人が出た。エスカレートしていって最終的には、午前1時に起床し、板を打って全員起こして回る人間が登場、「平等主義」だから偉い人も起床する。様々な人々が法螺貝やラッパで近所の人を起床させていたが、ついには「合理性を追求」し、村にサイレンを導入し、冬は五時、夏は四時、田植時は三時に役場のサイレンが鳴り響くと村民は残らず起床、村長宅の前に集まって、それぞれ手分けして共同害虫駆除作業に出動という村が出た。最終的には全国民は一定の時間に、サイレンによつて起床し、ラデオ体操をし、食堂に行き、職場に行き、帰宅し、自由に遊戯し又読書し、就寝に至るのが理想だと主張する頭のおかしい奴が登場する……ということになる。

こういうのを同調圧力だと解釈する人が多いんだけど、それは思い込みでしかない。イベントの少ない村でサイレンが建てられたら全員盛り上がるのが当然、「隣村の奴らが朝の5時に起きてやがるらしいな、それならこっちは4時だ! みたいな熱狂も普通、サイレンは目覚まし時計の民主化、今近所に誰でも使える瞬間移動できる謎の機械が設置されたらみんな目茶苦茶移動するのと同じ、同調圧力とか無関係ですごい日本だと思う。

もうひとつ、私自身も事実なのかどうか、確信を持てない事例を紹介したい。明治時代、甘やかされて育った華族の貧弱な子供は、通常の学校生活には耐えられないので、学習院に進学するという暗黙の了解のようなものがあった。これを利用して、平民の子供が通常の中学ではなくあえて学習院に進学すれば、周囲のレベルが低いため、労力をかけず帝大に進学が可能という受験攻略法が存在した。確かに欠員が出れば平民も学習院に入学できたし、学習院から帝大という進学ルートも存在している。しかしこんなことをする奴が本当にいたのかどうか疑問である。

ただし「平等主義」だから平民の子供が学習院に入学するのはなんの不思議はないし、制度をハックして帝大に入学するのも「合理的」、立身出世熱という「無駄な熱狂」によって目茶苦茶する奴が出てきても不思議はない。色々な欠落から結果的に、社会階層の移動が起きたという状態だ。実際にこんなことする奴がいたかどうかは別にして、理論的には実現可能な方法で、少なくとも同時代の諸外国には、貴族の子弟が通う学校に意味不明の子供がもぐり込める環境はない。圧倒的な平等さであり、すごい日本だなと思う。

ついでに書いておくと戦時中の日本は精神論がどうのこうのって話があるけど、あれも半分は嘘で悪い日なんてないから、カレンダーの大安とか仏滅は抹消しろみたいな合理性は尊ばれていた。というか事実として一応は近代化に成功しているわけで、戦時中だけ急激に馬鹿になるとかありえないのである。

偶然こうなったという側面は強いが、こういう日本はすごいと私は思う。日本をすごいと思い伝統を尊重するのは別に悪いことではないし、趣味だとしたら他人が口出しするようなことでもない。なので今後馬鹿にされた時は、今回挙げた三点を使って反論したら良いと思う。というか本当にすごいのかどうか、みんなで検証するのが生産的なんじゃないのかな?

今回引用元がついてないのは、思い出しながら書いたからで、大喧嘩になって引用元がなければ負けてしまうッ!!! みたいになったら国立国会図書館デジタルコレクションで探してください。探すのが面倒くさい場合は、金さえ払ってくれれば私が引用元を探してもいいけど、せっかくなので自分で探すと面白いと思う。