山下泰平の趣味の方法

これは趣味について考えるブログです

歩行者が車を殴れば交通マナーは向上する

生活圏には、だいたい自分と同じくらいの階層の人間が集まっている。自分の生活圏で異常な行動を取れば、排除され生活するのが難しくなる。だから普通の人は、あまり異常な行動をしない。

ところが道路では階層もなにもなく、生成りの人間同士が出会う。道路で異常な行動を取ったとしても、事故を起さない限りはデメリットはない。それどころか移動の速度が向上したり、気分が良かったりする。結果的に道路での移動では、不快な出来事が起きがちである。

効率重視で生きている社会的な地位の高い人が熟考し、ジャイロキャノピーが最も合理的な移動手段だと結論を出したとしても、実行に移すことは滅多にない。自分一人が移動するのならば問題ないのだが、道路では他人が存在するため、不快な思いをする可能性が高いからである。

道路では乗り物の値段で階層が形成されるため、金額の高い車はあまり嫌がらせを受けることがない。ジャイロキャノピーは嫌がらせをされる可能性が高い。だから全く車に興味がない人も、収入が増えれば良い車を買うという行動を取る。

1/12スケール ジャイロキャノピー01 標準車

1/12スケール ジャイロキャノピー01 標準車

こういった不快感を減少させるために、大型車>普通車>オートバイ>自転車>歩行者みたいな感じで、過失割合が算定される。だけど過失割合は事故が起きた時に有効なだけで、不快感を感じた時には無力である。 カスの車を避けてる歩行者や自転車やバイクは多いけど、そういう時に発生した不快感のやり所がない。

移動するための道具は面白かったり、美しかったりするけど、移動をすると不快感が発生する。本来なら様々な種類の乗り物を選べるはずの社会的な地位が高い人も、不快感を避けるためだけに一様に高い車を買う。これだと乗り物の種類が増えず、面白くないから改善するべきだと思う。

考えられる最良の解決方法として、歩行者が不快に感じた大型車、普通車、オートバイ、自転車を一度だけなら殴っても良いという一文を日本国憲法に加えるというものがある。不快な乗り物を殴れば、歩行者の不快感は減少する。もちろん自転車は、大型車、普通車、オートバイを殴ってもよろしい。バイクは大型車と普通車を殴れる。オートバックスでは、車に効率的にダメージを与えることが出来る武器が販売される。普通車は大型車を殴れるが、窓から殴らなくてはならない上に、相手は大型車であるからなかなか破壊できない。普通車で移動する人々は、圧倒的に不利な立場に立たされる。

この憲法によって、殴られたくない普通車のマナーが良くなる。通勤時に毎回マナーの悪い車に遭遇する人も、いつもより少しだけ早く起き、武器を持ってクソ車を待ち構えれば、天誅を与えスッキリした気分で出社することも出来る。肉弾派はマナーの悪い車にタックルし、筋肉野郎は毎日丸太を持って出社する。技巧派は薬品でダメージを与えようとするが、これは違法、液体は塗料が限界である。

こうなってくると、あえてどの乗り物も殴れる歩行者として移動する人も出てくるだろうし、間を取ってオートバイを選ぶ人も出てくるだろう。高性能ミニカー車両も発売されることになる。武装したロード乗りたちが、車やバイクを狙う。移動方法にバリエーションが出て、道路を見るのが楽しくなる。

良いことばかりな気がするが、ストレスたまりすぎおかしくなったサラリーマンが24時間無差別に車を殴り続けるといった事案も出てくることだろう。日本人は無駄に勤勉かつ工夫が好きで陰気な奴が多いため、おかしくなったサラリーマンは、パワードスーツみたいなものと武器を作ってしまうかもしれない。彼はすでに、大型車すら破壊する力(パワー)を手に入れている。

今はおかしくなってしまったが、彼は優秀な社会人であった。社内外の信望も厚く、上役からも部下からも頼りにされていた。またお客様のためには、上と喧嘩することも厭わないお客様第一主義の熱血営業マンでもあった。そして彼は、満員電車が嫌いだった。無表情の人間たちが、詰め込まれて移動させられる満員電車が、彼は大嫌いだった。

彼は考える。なぜ金を払ってまで、この様な不快な乗り物に乗っているのだろうか? ここには首を左右に動かす自由すらない。俺は子供は嫌いじゃない。しかし満員電車の中では、子供の声が我慢ならない。

この満員電車は、死人を詰め込み墓へと運ぶ乗り物に似ている。俺は死体になってしまったッ!! 俺は絶対に満員電車を許さないッ!! というわけでイカれたサラリーマンの自宅の地下には大洞窟があり、そこを秘密基地リーマンケイブとしている。乗り物が通ると自宅の屋上に設置されたサーチライトが輝き、おかしくなったサラリー野郎が殴りに行く。

登戸研究所の研究を引き継いだ彼は、ホームセンターで購入した資材によって、ついに怪力光線を完成させた。目から出る怪力光線は、飛行機をも破壊する。日本が海外から攻め込まれた際も、たまたま軍隊が乗り物に乗っていたため、サラリー野郎がボッコボコにして追い返してしまった。

そんな彼が唯一破壊できない乗り物、それが満員電車であった。目から出す怪力光線は、彼の肉体に甚大なダメージを与える。それ故、パワードスーツによって骨格を保護しているのだが、パワードスーツ姿はかなり恥ずかしい。満員電車に乗ってる元同僚には、着ているところを絶対見られなくない。自然、満員電車から足は遠のく。

ある朝、彼はパワードスーツを脱ぎ捨てると、背広を羽織りネクタイを締める。そして俺はあの怪物を倒さない限り、死体のままだとつぶやいた。

彼はラッシュアワーの満員電車の前に立つ。ここで目から怪力光線を出してしまえば、全身複雑骨折でかなり痛い。あとちょっとだけ太股が打撲っぽい感じにもなってかなり色の濃いアザが出きて痛い。しかしながら迫り来る電車を破壊しなければ、人体粉微塵で生命はない。なんでこんなことになったのかなぁ、どっちも嫌なんですけど、でも人体粉微塵になったら絶対死ぬけど、全身複雑骨折ならメチャ急いで救急車呼んでもらったら、死なない可能性あるから、やっぱ満員電車壊すかぁ……と決心した彼は、決死の覚悟で目から怪力光線を出し電車を破壊したのであった。

死体どもッ! お前らは自由だッ!! と叫ぶ彼だったが、現実は非情である。日本人は真面目だから、別に電車から出て来ない。行儀よく電車の復旧を待ちます。JRの工事の人も頑張って仕事するから、すぐ復旧する。死体ってなんなんでしょうね、おかしな奴が変なことして迷惑だよなぁってみんなが悪口を言っているし、全身複雑骨折ですごい痛いし、救急車の人も心なしか半笑いである。つか俺は満員電車乗るっていっても12分でそんなに嫌いじゃなかった気もしてきたし、途中から自転車通勤でむしろ車にムカついてたわなどと思いながら、正気を取り戻したサラリーマンは大号泣をするのだが、この様な悲劇を起して良いのか? 良いはずがない。

なぜこんなことになったのかというと、歩行者が不快に感じた大型車、普通車、オートバイ、自転車を一度だけ殴っても良いという一文が日本国憲法に加わったからである。なぜそんな一文を、日本国憲法に付け加えなくてはならなかったのか? 身勝手な運転で人を不快にするカスが存在するからである。もう二度と悲劇を繰り返えしてはならない。だからみなさん、今日も一日譲り合いの心を持って、安全運転でいきましょう。

譲り合い みんな仲良く 交通戦争

小説 交通戦争

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