最近はAIを、外部記憶、あるいは脳を拡張するための道具として利用している。
私は今「苦学」と「無銭旅行」にまつわる本を書いているんだけど、当然ながら徳富蘇峰や杉浦重剛、日本の鉄道制度などが登場する。例えば徳富蘇峰については、名前くらいは知っている。一般的に評価されている仕事については、ほとんど知らない。しかし彼が清貧をどう捉えていたか……これは逆に一般的には知られていない知識なのだが……については、そこそこ知っている。つまり、知識がかなり偏っている状態だ。
知らないことは不安なので、調べないといけない。しかし活動が広範にわたっている人物や、巨大な組織もあって、すべてを把握するのは難しい。これまでは、こういう時には、できる範囲内で実資料を読み込んできた。しかし徳富蘇峰なんかはものすごい量の文章を書いている。たかだか数百文字を書くために全部読むというのは、ちょっと無理がある。仮に全部読んだとしても、それらの情報を脳に保持しながら書くのは、完全に無理、苦学と無銭旅行の世界はショボいわりにかなり広い。だから、相当量の情報を脳に保持しながら書かなくてはならない。すでに脳に徳富蘇峰のことを置くスペースが残っていない。
なので Deep Research の結果を必要な時に参照することにしている。コツは、誰かが調べてそうな内容でレポートを作ってもらうこと。たとえば:
"大町桂月"の経歴を教えてください。帝大を卒業するまでを詳しく知りたいです。父親の大町通が下級藩士だということは知っていますが、叔父がどのような人物であったかも教えてください。
この程度の内容なら、使えるレポートを作ってくれる。
ただし、
「頭山満、杉山茂丸、内田良平が苦学生を支援していた事実を調査して下さい」
「宮良當壯の苦学生時代の情報を集めてください」
といったものは調べている人が少ないので無理、自分でメモを作るなり、それにまつわることを書いている間は、頭のどこかに置いておくなりしないといけない。
正しいかどうか怪しいところや内容がヘボいところがあるとか、色々と面倒くさいこともなくはない。(ちなみにだけどレポートの品質については、文理やマイナーかメジャーか等、ジャンルによって差異はかなり大きいという印象)とりあえずレポートを作っておけば「忘れても参照したらいいや」という感じで、脳が拡張されたような気分になる。あとちょっと知っといたほうがいいけど、検索するの面倒くさいから、ちゃっちゃとレポートを作ってもらってガーっと読んで終りなんてことができる。忘れても参照したらいいや、知らないけどすぐに雑に知ることできるからいいや、というのは気が楽で、脳が拡張されたような気分ではある。
人間が一度に扱える情報の量には限界がある。俺はものすごい量の情報を一度に扱えるみたいな人もいるかもしれないが、これまでの経験から割り出すと、その差はせいぜい2倍くらいのものでしかない。だから人間はメモやノートで対処するわけだけど、Deep Research を使うとものすごく楽なので書くものの質が上ると思う。
今のところはこのくらいのことにしか使えないけど AI はドグマや生育環境に影響さないという強みがあって、人間よりも AI のほうが正しく過去のことを認識し出力できると考えている。ただしそれは、人間にとっては不快なものになる可能性がある。私がやっている昔のことを調べて分析するといった分野だと AI が出した不快で正しい結果を、先に認めた奴が勝ちみたいになる気がしなくはない。
