山下泰平の趣味の方法

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文系の素養は1000時間くらいで身につく気がする

文系の素養は1000時間くらいで身につく気がする。

ここでいう文系の素養っていうは、例えばダイバーシティーだとか SDGs みたいな新しい概念に触れ、好き嫌いは別にして大まかな部分は一瞬で理解できるみたいな技術、自分が触れたことのない専門領域、例えば見たことも聞いたこともない比較法学、経済学説史みたいなものに触れ一通りの説明を聞くなり読むなりした後で、それが自分の理解の範疇外であったとしても、こういう仕組みの分野なのかなくらいのことは当てずっぽうで分かって大きくは外さないくらいの能力を指す。厳密に定義するのは難しいけどだいたいこういう感じで、これが身に付いていると自分の知識だけで物事を解釈したりすることもなくなる。

これは義務教育の内容が曖昧であったとしても、だいたい1000時間くらいかけたら身につくと思う。自分が身に付けたものっていうのは高く見積もりたくなりがちだけど、1000時間あったらいけるんじゃないのかなというのが今の嘘偽りない感想である。身に付けた後どうするのかは人による。

どうやって身に付けるのかっていうと、基本的には(一般的には難しいとされるような)文系の本を読んで理解するだけでよくて、たまに対応できない状況があってもいいなら100冊くらい、だいたい分かるくらいなら300冊くらいで十分だと思う。それを選ぶのが大変ではあるけれど、500時間くらいたつ頃に読む速度は上がり、目次から内容を把握する能力も身に付いてるのでそんなに難しくない。1000時間しかないので小説は読まないほうがいい。

暇な若者なら1日に7時間くらい費やすことができるので、疲れて寝たり考えたりする日なんかも含めて考えると、180日あれば文系の素養は身に付けることができる。働いているオッさんや高校生くらいまでの子供は厳しいものの、1年あればなんとかなる気がしないでもない。さらに選んでくれる奇特な人がいて、他人が選んだものになんの疑問もなく時間を費やせる人格の持ち主という条件を満たせれば、500時間くらいで文系の素養を身に付けることもできなくもないと思う。ただし人が選んだものになんの疑問もなく時間を費やせる人は、文系に限らず深く考える分野に向いてないような気がするので、だいたいのところを身に付けた上で別のことしたら便利だと思う。

今は知らないけど昔の文系の偉いオッさんなんかが、「若い頃に読めるだけ読んだから今は読む必要がない」みたいな話を学生にして、ビックリした学生がオッさんになってから感心したエピソードとしてそういう話を書き残すみたいなことがあったんだけど、そういう奴もせいぜい1000時間くらい、あるいはそれ以下の時間しか使ってない可能性が高い。あとは暗記したことをヴェーヴー発話してただけで、昔の文系の偉いオッさんも感心した学生も、最初に書いた「身に付けた後どうするのかは人による」の部分がない人たちなんだと思う。