国立国会図書館デジタルコレクションは最高である。
- 「国立国会図書館デジタルコレクション」が面白い
- まずは遊んでみる
- 使いまくりたくなったら準備しておくと効率が良い
- 速度を意識して使う
- 速くなるとどうなるのか
- そこに全てはない
- ものすごいものをどうでもいいことに使うということ
「国立国会図書館デジタルコレクション」が面白い
「国立国会図書館デジタルコレクション」が面白い。
「国立国会図書館デジタルコレクション」では著作権など権利状況に問題がないことが確認できた約36万点の資料が無料で公開されており、ようするに古い本が無限に読めるサービスだ。『吾輩ハ猫デアル』の大倉書店版なんかも読むことができる。
最近だと全文検索が可能になった「次世代デジタルライブラリー」や、絶版等の理由で入手が困難なもの(著作権的な部分でこれまで読めなかった資料)が閲覧できる「個人向けデジタル化資料送信サービス」も開始されかなり話題となった。
これらのサービスについて色々な人が色々なことを書いてるんだけど、私にとっては異常に面白い娯楽のためのツールでしかない。面白ツールの利用者が増えれば増えるほど、変なことを始める人も増えるので、もっと多くの人が肩の力を抜いて気楽に遊ぶようになると面白いだろうなと思う。
その一方でデジタルライブラリーの利用法全般に関してはちょっと考えることろがあって、最も重要な機能である速くなるということが軽視されているように感じている。ここを押えている人が増えると、もっと効率良く面白いものが世の中に出てくるようにあるんじゃないのかなと思う。
色々あるけど結局はなんでもよくて、とにかく使ったらいいみたいな感じなのであろうというわけで、国立国会図書館デジタルコレクションの遊び方を紹介していく。
まずは遊んでみる
どんな遊びでも相性があって、誰かの最高の娯楽は誰かの苦行であることも少なくはない。やってみなくては好きか嫌いか分からないので、なんでもいいから使うしかない。だからまずはなんでもいいから検索したらいいと思う。
とりあえず「国立国会図書館デジタルコレクション」にアクセスし検索する。検索する単語は本当になんでもよくて、数年前に私が最初に検索したワードは『拳骨』か『剛勇』だったと思う。別に『拳骨』や『剛勇』について知りたくもなかったんだけど、考えるのも面倒なんで思い付いた単語を検索したら面白いものが大量に出てきて今に至るという感じである。
今もこういうことはしていて、先程も試しに『大活動』で検索してみた。なぜ『活動』ではなく『大活動』なのかといえば、大とか超とかスーパーとかミラクルとか使う人間はだいたいアホなので、バカみたいな文章が読めるかなーと思ったからだ。バカみたいな文章は面白いに決っているので絶対にバカみたいな文章が読みたいというわけで、検索してみるといくつか良いものが出てきた。
女賊か令嬢か : 探偵秘録 湯川明文館 昭和三(一九二八)年
曹洞宗綱要 新井石禅 著 鴻盟社 大正六(一九一七)年
全く意味が分からないイラストと文章で最高だと思う。面白いだけではなくて『大活動』などの単純な単語で検索すると、次のように論文や小説が表示される。
検索することで様々なジャンルの資料に出会い、なんだかんだで興味の幅が広がったりすることもあったりする。
こういうやり方は新たな分野を調べる時なんかにも役に立つ。「個人向けデジタル化資料送信サービス」が公開され最初にしたのは、「図書館・個人送信資料にのみチェック『無名』や『徒歩』などで検索することだった。
検索結果が2000とか出てくるのをずっと見ていく。
そうすると聞いたこともないような雑誌などが出てくるので、試しにチョロっと読んでみるといった流れである。一人の人間が知っていることなんてショボくてどうしようもないので、検索して出てきたものを全部見るようにするのが良いと思う。
こういうことを続けていくうちに慣れてきて、だいたいこういう単語を検索すると良いものが出てくるって分かってくる。例えば『疲労(くたび)れ』で検索すると次のような良いものが表示される。
小僧の旅行 : 滑稽小説 五峯仙史 著 大学館 明治四一(一九〇八)年
『疲労(くたび)れ』たとか書く本人も疲れているはずなので空虚な文章が読めるのではと期待して検索してみたんだけど、マジに無内容なものが出てきて最高だった。ちなみに作者の五峯仙史は最初期のユーモア小説を支えた人物で、「吾輩は猫である」のパロディー作品『我輩ハ小僧デアル』で中途半端なヒットを飛している。その続編がこの「小僧の旅行」で、ご覧の通り内容はなく無であることが面白い怪作であるが別に読まなくてもいいと思う。
こういうものを色々と検索して面白いッ! ってなった人は相性が良いので使い続けて、別に面白くないって人はこういうサービスがあるのかーって覚えておいて、必要になったら使うという感じでいいと思われる。
使いまくりたくなったら準備しておくと効率が良い
延々と検索して変なものが出てきて面白がるっていう使い方で十分なんだけど、面白すぎるから十年単位で使いまくるぜってなった人は多少の準備をしておいたほうが良いと思う。別に難しいことはない。
ちなみに無料でできるものと、お金がかかるものがある。最初は無料でできるものを試したら良いと思う。
無料でできる
検索演算子だけ覚えておく
検索演算子というものがある。これを使えるようにしておく。
「国立国会図書館デジタルコレクション」だとこういう感じ。
グーグルの場合はこう。
全てを把握しておく必要はないけど、完全一致だけは覚えておくと普通に便利。
完全一致を検索する
単語や語句を引用符で囲みます。例: "世界一高い建築物"
難しいことではないので、今日から使えるようにしておいたら良いと思う。
国立国会図書館デジタルコレクションの使い方を知っておく
意外に色々な機能があるので、この辺りを流し読みでいいから読んでおくのが望ましい。
面倒な人は閲覧画面で端にある「?」クリックし、キーボードでの操作一覧だけ覚えておいたらいいと思う。
国立国会図書館オンラインに登録しておく
「国立国会図書館オンライン」に登録すると「個人向けデジタル化資料送信サービス」を利用することができる。
登録しなくても楽しく使えるけどガッツり使いたい人は登録する。
メモ環境を作る
これは絶対に必要で、メモを取れる環境を作っておいたほうが良いと思う。なぜ必要なのかは後述する。
有料でできる
パソコンを用意する
「国立国会図書館デジタルコレクション」はスマホでも使えるってことになってる。しかし普通に読むのはちょっと厳しい。私は Termux や Tasker で環境を作り強引に読んでいたけど、ものすごく面倒くさいのでパソコンを用意しておくと良い。
スペックも良いもののほうが好ましい。検索してチョロチョロ読むだけならなんでもいいけど、本格的に利用しはじめるとかなり負荷が高いからだ。私は基本的に「国立国会図書館デジタルコレクション」で公開されている書籍をダウンロードして読むのだが、書籍データを常時三冊、多い時には二十冊分くらい開き続けている。読みながらメモもするし、ブラウザで検索しまくったりもするので、 M1 の13インチ MacBook Pro のメモリ 16GB でも遅いってなることがある。
ひとつひとつは地味だけど、重なると重いといった感じで、パソコンはそこそこ性能が良いものを使ったほうが良い。たいしたことはしてないので、ソフトウェアを改善すれば低スペックでも大丈夫な気もするが、現状だとこういう感じなのでスペック上げるしかない。
できれば良い椅子とモニタがあったほうがいい
「国立国会図書館デジタルコレクション」を延々と使いたい人は、良い椅子とモニタを用意しておいたほうが良い。特に良い椅子は大切で、一日八時間くらい読み続けていると腰が破壊されることがわりとある。
モニタは視力にもよるんだろうけど、自分の視野に入る多きさで最大のものを選ぶのが良い。読む時は本しか見ないので、マルチモニタはあまり役に立たない。
余談だけど私はノートパソコンをモニタに接続して使っている。これには意外なメリットがあって、デジタルデータの書籍は同じ大きさの画面でずっと読んでいると、サイズに飽きることがある。そういう時にモニタの大きさを変えると、さらに読み続けることができるようになる。
速度を意識して使う
デジタルアーカイブの最大のメリットは、これまでとは比較にならないくらい速いという点である。速いからこれまでとは全然違う考え方で調べると効率が上がる。
ただし「国立国会図書館デジタルコレクション」が常に最速なわけではない。別に速いものがあればそっちを使うという柔軟性は維持する必要がある。
こんなことをしたい人はいないと思うけど、全く知識がない状態から近代文学を高速で学ぶのであれば、最初は画像データの「国立国会図書館デジタルコレクション」ではなくてテキストデータの「青空文庫」で読みまくったほうが速い。
高速に読むための手段が色々あるからだ。読んでるうちに速読できるようになるはずなので、結果的に超効率が良くなる。
800ページほどある書籍を精読するのであれば、まずは「日本の古本屋」で検索してみる。
在庫があって購入できるのであれば、紙書籍を手に入れて読んだほうが速い。大量の画像データを精読するのはなかなか大変だからである。逆に雑に読むのであれば、紙書籍より画像のほうが速い。
実用的なことをサクっと学びたいなら Kindle Unlimited が安くて速い。
こういう感じでなにをしたら一番速いのかは常に意識しておいたほうがいい。
「国立国会図書館デジタルコレクション」で速いのは、ひとつの分野をガーっと高速で読むことである。ただし読めすぎるため、記憶できないっていう状況が発生するので、対処方法を考えておく必要がある。私の場合は先に書いた読書メモと、塊と場所といった概念を導入して対応している。
読書メモはそのままなので分かる思うんだけど、塊と場所について解説しておく。
個人的な話だが、昨年のある時期に青年団に関する書籍を読みまくった。だいたい100冊弱だと思うんだけど、これを全部記憶しておくのは意味がない。だから記憶はあきらめる。どの程度諦めているのかというと、書籍のタイトルはもちろん、青年団の創設期に中心となった人の名前すら曖昧だ。ただ青年団はああいう感じだという塊があって、文化全体のあのあたりの場所に置いておくというような概念が頭に入っている。
こういう形にしておくと、例えば通信教育に関する文章を読んだ際に、これは青年団のあの辺りの場所にあるが関連しているなと理解することができる。なんらかの出力をする際には、青年団の塊と通信教育の塊から必要な部分だけ取り出す。この時に読書メモが役に立つ。
良い読書メモは形式は人によって変ってくる。私は同じ時期にひとつのジャンルを延々と読み続けたりする性質があるので、日時が情報を引き出すための重要な要素になっている。だからメモを書いた日時を記録してある。あとは書誌情報と本の重要な要素をメモしておく。最近のメモはこういう感じ。
東都游学学校評判記 河岡潮風 著 博文館 明治四二(一九〇九)年 1909 P211
2022-05-06 14:06:22:自然主義関連の記述あり。p036強い女と結婚する。p049楠正一、ピアノがあった。p069賄征伐で食堂を完全に破壊。p072苦学生で高等教育を受ける時代はモウ過ぎた様に思われる。p096 日本大学に反対、日本中学あるだろがで反論。p097法政大学は苦学生の学校、中国(支那)留学生に関する言説。。基本的に富豪の息子。p105カンニングで騒ぐな。普通。代弁p110悟りについて。p116ライスカレー丼p126そのうち校長が排斥されるので写真は掲載しない。p131各種学校の飯の値段。p134師範学校の出は金なさすぎて悪人になりがち。p156士官学校の食事。p168豚のさしみp169 不退転の向上心p176桜風会
他人が見ても意味が分からないと思うけど、私にとっては重要な情報で、これ読むとだいたいどの場所にあるから塊のあの辺から持ってきたらいいかみたいなことが分かる。とにかくメモは必須だと思う。
デジタルアーカイブをジャンジャン飛ばし読みした経験がないと、内容というかイメージは頭にあるけど記憶にはないっていうのが分からないかしれない。ただ本当にマジで完全に分からなくなる。私が「国立国会図書館デジタルコレクション」を利用し出したのは2008年(もしかしたら2007かも)あたり、メモを取りはじめたのは2010年なので、あれはなにに書かれていたんだろうというものがかなりある。今まさに探しているのは、バネを使った永久機関を発明したと称し特許詐欺を働いていた人物が、監獄でもターゲットを探し出し騙そうと嘘をつくうちに、本当に永久機関を発明してしまったという妄想にとりつかれてしまい精神的におかしくなってしまったというエピソードだ。こんな特徴的な話なんだから、なにに書かれていたのか覚えていそうなものだけど、全然思い出せない。悪いことに横光利一の「微笑」とよく似ている部分があって、もしかしたらこのエピソードも私の妄想かもしれない可能性もあり、なにがなんだかよく分からない。
なんでもかんでもメモする習慣をつけておくとこういうことにならないわけだけど、メモ環境をなにで作るのかが難しい。私は emacs を基本にして AppleScript やシェルスクリプトでメモ環境を作っている。スマホでもできないことはないけど、やっぱり面倒くさい。
単純にメモ環境だけなら VS Code を使うのが楽そう。
残念ながら国立国会図書館デジタルコレクションメモみたいなのはないっぽい。
だから自分が読んでいるものに関する書籍の書誌情報とページ数を取得して……みたいなのは自分で作るか、誰かが作ってくれるのを持つしかない。作れない場合はコピペで対応とかになるけど、一冊あたり1分かかるとして、1000冊メモするとだいたい17時間になる。17時間もコピペを我慢できるのかっていうと難しくて、途中でメモしなくなる可能性がでてくる。だから頑張って勉強してそういうの作れるようになっておいたほうが良さそうだとは思う。
速くなるとどうなるのか
先程、青年団関連の本を読んだと書いたけど、実は私の興味の領域ではない。むしろどうでもいいと思ってるんだけど、必要だし読めるから読むかといった感じであった。それで実際に読めてしまう。
こういう興味の薄い分野について知りたい場合は、昔なら青年団についてまとめてある書籍を探してきて、三冊程度読むくらいのことで済ませていた。しかし「国立国会図書館デジタルコレクション」登場以降は自分でガーッっと読んでしまうことができる。
今は苦学の本も読んでいて、こっちは興味がなさすぎて苦学についてまとめてある書籍を購入して済まそうかと思い読んだんだけど、教育制度とまざっている内容だったんで自分で読むことにして読んだわけだけど、こういうのも労力やお金がかからないからできるだけである。なんの興味もなく、軽く知りたいだけの苦学関連の古い書籍を大量に購入、あるいは図書館に通い読むなんてことは、コストがものすごいことになるので、昔なら誰もしなかったことだと思う。
このように別に興味はないけど、ちょっと必要かなくらいのモチベーションで、50冊とか100冊読めてしまうのはものすごいことだと私は感じている。100冊読むっていうとものすごい時間がかかる気がするけど、実はそれほどでもない。明治30年から大正10年あたりまでの特定分野の書籍なら、10冊も読めばだいたい型みたいなのが分かってくる。書いてあることもだいたい同じなので、高速で目を通しながら型からズレてるものを探し出して、少し丁寧に読むみたいな作業になるので3ヶ月もあれば作業は終る。
もっというと意図的に自分を変な教養を持つ人間に育て上げることも簡単になってきている。「国立国会図書館デジタルコレクション」で『修養』を検索すると、インターネット公開資料が3505件ヒットする。
流石にこれを全部読むのは時間がかかりすぎるので、詳細検索から出版月日を1800年から1920年にしぼって検索すると1700件になる。1700冊くらいならば頑張れば読める。
これを実際に全部読むと、かなり変な教養を持つ人になれる。日本における修養を研究している人はいるものの、修養を研究する人はもともと教育や宗教、あるいは倫理などに興味を持っていた人だと思う。そういう教養をすっ飛ばし、修養だけ知ってる人間というのはこれまでならば存在し得なかった。だけど今ならそういう人間になることができてしまう。そういう謎の人は、これまでの人類が考えていたこととは異質のことを考えることができるはずなので、やってみたら面白いような気がしないでもない。
そこに全てはない
「国立国会図書館デジタルコレクション」はすごいけど、全てはまかなえないことを認識しておくのが大切で、「次世代デジタルライブラリー」の全文検索も体感としては3割くらいしかヒットしない。Google Books だとヒットするけど、「次世代デジタルライブラリー」だと出てこないとか、その逆だとか色々ある。
新聞なんかも出てこないので、別のものを利用するしかない。
「国立国会図書館デジタルコレクション」がすごすぎるので、そこで全部やってしまおうってなることも多いんだけど、買ったほうが速いだとか別のサイトのが良いだとかもあるということは忘れないようにしておいたほうが良いと思う。
ものすごいものをどうでもいいことに使うということ
「国立国会図書館デジタルコレクション」関連のことはとても良く、政策も「国立国会図書館デジタルコレクション」関連の人たちが担当すれば日本良くなるのではと思うことも多い。集団なんてものはだいたい間違ったことをするので、なんであんなに上手く行っているのが謎すぎてたまに怖くなることもあるけど、なにはともあれ私は楽しくて快適なのでまあいいかといったところである。
そしてそういった優秀な人たちが技術的、政治的な難問を解決しながら作ってくれている「国立国会図書館デジタルコレクション」を、意味のないことを調べるためだけに使っていると最高の気分になる。もともと私はものすごい労力と技術力が注がれた末に作られたものが塵芥みたいな目的で使用されている状況が面白くて好きだったんだけど、まさか自分が毎日そういうことをすることになるとは思っていなかった。
もちろん正しい使い方も面白いけど、私みたいに暇つぶすためだけに使うのもなかなか良いので、とりあえず触ってみて色々試したら楽しいと思う。