簡易生活のすすめ 明治にストレスフリーな最高の生き方があった! (朝日新書)
- 作者:山下 泰平
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2020/02/13
- メディア: 新書
『簡易生活のすすめ』では、すっ飛ばしてあるところがわりとある。これは意識的にやっていることで、明治初期の人々の考え方や政治の仕組み、あるいは明治初期社会主義についての解説をすると、簡易生活が伝わりにくくなってしまう。そもそもそういうことは別の人のほうが、私よりずっと上手く書けるので、私の仕事ではないなといった雰囲気もある。
それでもお前がすっ飛したところに興味があるんだッ! という人もいるんだろうから、すっ飛ばしてある所が書かれている本を紹介していく。
まずは明治初期あたりから30年代までの考え方については、こちらの本をお勧めしたい。
明治の社会の中で、どういう風に考え方が変化していったのかがよく分かる。これまで色々と明治の文章を読んできたつもりだけど、私が全然気付かなかったというか、考えられなかったことが鮮明に描かれていて最高だった。
ちょっと高いよって人は、別の観点からの分析だけどこちらの本も良くて、生きづらい明治社会について書かれている。
生きづらい明治社会――不安と競争の時代 (岩波ジュニア新書)
- 作者:松沢 裕作
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2018/09/21
- メディア: 新書
『簡易生活のすすめ』では明い明治が描いたんだけど、こういう側面もあった(というか、こっちが一般的な認識)なのかと分かってくると思う。ちなみに私の興味の対象は、みなが同じことを繰り返しているうちに、バグみたいに違う考え方が登場し、理屈で考えるとこの時代にこういう風に思考するのは無理なのだが……といった風景を眺めることで、簡易生活もまたそういう存在だといえる。
続いて社会主義者についてである。『簡易生活のすすめ』には、社会主義者が沢山登場する。しかし社会主義者を全面に出しちゃうと雰囲気が変ってしまうので、サラっとしか紹介していない。そのあたりを知りたい人には、こちらをお勧めしたい。
パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い (講談社文庫)
- 作者:黒岩 比佐子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/10/16
- メディア: 文庫
私が扱った時代のすこし後の堺利彦の活動が描かれている。ついでに当時の雑誌を作る現場の雰囲気を知りたい人は、同じ著者のこちらも読むと楽しいと思う。
- 作者:黒岩 比佐子
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川学芸出版
- 発売日: 2007/12/10
- メディア: 単行本
本を書いてる途中は気付かないのだが書いた後に、あの部分が勘違いだったらどうしよう、当たり前の定説みたいな雰囲気にしちゃったけど一般的な認識と違うような気がしてきた、俺はこれはすごみたいな表現をしちゃったけど実は当たり前の周知の事実かもしれない……というように、気になることが沢山でてくる。そんなわけで以上の本は簡易生活のすすめを書き終った後で、嘘を書いてないかだんだん不安になってきて答えあわせの意味もあって読んだ本であるのだが、とにかく面白いといった感想だった。ついでに特に間違って考えているところもなかったので良かった。
もう少しだけスッ飛した部分を捕捉してくれる本の紹介を続けよう。明治の社会は上流から下層までかなり幅が広い。そのあたりについてもあえて触れていない。こちらの本では明治の下層社会について書かれている。
こういった本を書いたのは当時の新聞記者で、彼らの多くは中流よりちょい下くらいの生活を送っていた。そういった人たちが見た下層社会なので、フィルターもかかっているんだけど、だからこそわりと広い範囲の明治社会がわかると思う。
下層社会で生きる人の生活を改善しようとした組織の中に、キリスト教系のものがある。キリスト教の団体は、生活改善運動へ強い影響も与えているのだが、このあたりの事情も簡易生活のすすめでは言及していない。あと禅やら時間やら計量やら、細々したものがある。こちらも概ねすっ飛している。これらに関しては残念ながら良い本を知らないので紹介できませんから興味のある人は自分で探してみてください。
簡易生活のすすめ 明治にストレスフリーな最高の生き方があった! (朝日新書)
- 作者:山下 泰平
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2020/02/13
- メディア: 新書