山下泰平の趣味の方法

これは趣味について考えるブログです

ゴミみたいな面白さを探し出して AI に抵抗していきたい

私は明治の新聞を読むことがある。新聞のデータベースはなかなか素晴しくて、過去の記事なんかはキーワードで検索できたりして本当に最高だと思う。最高なんだけど、これは他人が作ったデータベースで、ずっと利用していると自分が人工知能の一部になった気分になる。

すごい昔に人工知能のことちょっとだけ調べたことがある。チューリング?とかのメチャ分厚い変な本を読んだだけの古くさくて雑な理解なんだけど、人工知能ってのはデータから自動的に適切なものを引出すみたいな雰囲気の仕組みである。人間の知的活動と同じですね。

新聞以外のなにか読んで気になった単語をリストアップしていって、自動的に新聞各社のデータベースを検索し、一覧を抽出するみたいなのはやろうと思ったら私だってすぐに作れる。データベース利用料金を払う金がないから作ってないだけで、金あったら作ってる。私よりも頭が良くて金ある人が頑張ったら、面白みのあるパターンや言語を自動で学ぶ面白記事自動抽出人工知能みたいなのも、わりとすぐに作れてしまう。OCR の技術がヤバいことになってるから、文字を自動で読みとって面白データベースを生成するような仕組みも作れる。こうなってくると面白さを自動的に定義することも可能となり、人間が昔の新聞を読む意味はなくなってしまう。作れるのになんでそういうものがないのかというと、面白記事自動抽出人工知能に市場価値がないからだ。これで金が儲かるんならどっかの会社とか個人が作ってるし、他の用途だともうだいぶ前から機械が文章を読んでいる。

新聞記事以外でも儲からないからやらないだけで、人文系の研究者を人工知能で置き換えできる部分はわりとある。プロならもうちょっと粘れるかもしれないけど、私は研究者でもなんでもなく、昔のことで遊んでいるだけなので、人工知能がマジになってきたら普通のやり方だとすぐ負けてしまう。これは生物としてはかなりムカつく。

ところで私が小学生くらいの時には、将棋してる途中で腕力あるカスがルールを変える子供将棋という競技が存在した。子供将棋ではいきなり桂馬が無限に横に行けるようになったり、香車が他の駒を貫通して大将を取ったりする。勝利すると腕力あるガキが絶叫する。大人からするとレベルが低いものの、Google の人がメチャ頑張って作り上げた人工知能(AlphaZero)に勝利することができる。人工知能が一度は勝利したところで、腕力あるカスが王将取った奴が負けってルールを作り上げた瞬間に逆転勝利できる。子供の担任か親父を連れていけば勝てるかもしれないけど、担任も親父も人間だから知能が人工じゃなくなってしまいやっぱり人工知能の負け、行為自体はレベルが低いが勝ちは勝ちなんだから仕方ない。なぜ子供にしては腕力あるだけのカスが、人類の英知の結晶である人工知能に勝利できたのか説明すると、腕力あるレベルの低いカスがまだ存在しない価値やルールを作ったからである。

それで私が今なにしてるのかっていうと、古い新聞を順番に読みながら、なにが面白いか決めている。例えば私は水道からヒルが出たという記事がすごい好きで、最初そんなに好きじゃなかったけど、だんだん水道からヒル出るの好きになってきた。

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まともにこういった記事を活用するんだったら、明治の衛生状況の向上だとか、当時の水道設備の水準だとかを調べるといった目的になると思う。だけど私は水道からヒル出て、明治のオッさんがビビるとかそういうのが面白くて仕方ない。ヒルが出れば出るほど面白さ加速していって、水道からヒル出た記事を読むと絶対に私は笑う。

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私自身もなんでヒル出てくると笑けてくるのか理解できないけど、とにかくレベル低い行為だと思う。私はこのレベルの低さが良いと思ってて、水道からヒル出る数が増えていくと、笑いの値が増えるみたいなのは作れそうだけど、作ったところでなんなのかという問題がある。あとヒルブームは既に去ってるからな。今は親切オッさんの波が来つつあるわけだけど、2ヶ月後には別の面白さ発見していると思われる。器械で抽出するのとどう違うのかというとかなり曖昧で、私の感じる面白さをパターン化しようと思ったら出来ないこともない気がするというか、読みきれない量のテキストを読んだ末にどういう面白みにたどりつくのか興味出てきたが、そんなもの誰も作ってくれないと思われるし、こういうレベル低すぎることに面白さを見出すのは人間の特権で、今後も私はゴミみたいな面白味を追求していきたい所存です。

人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの (角川EPUB選書)

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