山下泰平の趣味の方法

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マナーは難しい

食事中に水分を取るのは行儀が悪いというマナーがある。私は食事中に水分を補給する。だからこのマナーに照し合わせると、行儀が悪いということになる。

昔の和食は味が薄く、温度もそれほど高くない。だから水分を取らなくても大丈夫だった。薄味だから水分を取ると、作った人の意図が台無しになる気もする。昔の和食のようなものを食べながら、ガブガブ水分を取る人が不快だというのは理解できる。

しかし今は洋食が普及しているため、水分を取らないと厳しい食事がある。カラアゲを水分なしで食べ続けるためには、余程工夫しなくてはならない。和食も明治の始まりあたりから随分と変っていて、家庭料理でも温かい食事や味の濃いものが増えてきた。食事中に水分を飲むのは行儀が悪いというのは、明治時代の後期には日常的生活の上では、すでにあまり合理性のないマナーになっている。次に掲載するのは、明治時代の役所の昼食時の描写である。

f:id:cocolog-nifty:20150520202306p:plain 滑稽女官吏 五峰仙史 著 大学館 P119 明治四一(一九〇七)年 1908

この様に明治の人も、昼飯時には普通にお湯やお茶を頼み、食べながら飲んでいる。

それでは食事中に水分を取るのは行儀が悪いというマナーには、意味がないのかというと、そういうわけでもない。そういった行動が求められる場面もまだまだある。

さらに食事中に水分を取る人を見て不快に思う人がいる以上は、配慮をするのがマナーだろう。間違っても不快に思っている人に、『滑稽女官吏』を読めと言い放ってはならない。ますます空気が悪くなり飯が不味くなってしまう。

だからそう思う人がいそうな場所では、そういう食べ方をしないというのが解決策なのだろうが、これが合理的な判断だというわけでもないし、なかなか難しいところではある。

ハワイアン・マナ 99の幸運習慣

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