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山下泰平の趣味の方法

これは趣味について考えるブログです

私はこういう人です

明治のレシピには火加減がほとんど出てこない

明治文化

明治あたりのレシピ本には火加減がほとんど出てこない。大正時代のレシピでも火加減はこういう感じ。

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『ゆるゆると煮』

この他に、ぽち火というのもあるけれど、強火、弱火という表現はほぼない。なぜに火加減についての言及がないのかというと、当時の台所が貧弱だったからである。まだ木炭が主流で、火力の調整もままならない。それでもなんとか改善しようと色々な人々が努力をしていた。

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これは明治35年の製品、煙が少なくエネルギー効率の良さがアピールされている。火力の調整よりも効率や安全性を追い求めていた時代だ。

もうひとつ明治42年の炒牛肉のレシピを紹介してみよう。

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『炒める』という表現ではなくて『煎る』となっている。料理をする人は、このレシピだとちょっと味のボヤけたものになるんじゃないのかっていう疑問を持つかもしれない。これは恐らく当時の家庭環境に合せて最適化したレシピなんだろうと思う。調理環境はもちろんのこと、手に入る食材や調味料、今とは全てが違う。当たり前だが環境が変わるとレシピも変わる。

ちなみに明治35年の最新鋭のキッチンがこれ。

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http://museum.city.fukuoka.jp/archives/leaflet/276/index02.html

有名な大隈伯爵家の台所で、ガスを使っている。着火装置なんてものはなくて、マッチで火を付ける。こういうガス台と同じ仕組み。

オーブンもあるし火力の調整も可能、このキッチンならまともな中華料理も作れるかもしれない。余談になるけど、天井がガラス張りで明るいっていうのも大きな特徴で、当時としては模範とすべきとされていた。

しかしこれは大隈重信だから出来たこと、この台所では毎日50人分の食事を作っていたし、温室で野菜の栽培もしていた。こういったキッチンが普通の家庭にまで普及するのは、まだまだずっと後のことである。

話がズレちゃったけど、レシピ本と一般的な調理環境が深く関わっているってのは当然のお話。しかし実際に見てみるとかなり面白い。手許にある昭和60年のレシピ本には、電子レンジを使った調理方法がひとつも出てこない。

この時代だとすでに電子レンジの普及率は40%くらい、それほど珍しいものでもない。レシピの考案者がレンジになじみがないから省いたのか、誰でも使えるレシピ本にしようと意図的に使ってないのか、そういうことを考えてみるのもなかなか良い暇潰しになるというわけで新年明けまして読んでくれてサンキュー今年もヨロシクッ!

土井勝 お弁当と常備菜

土井勝 お弁当と常備菜