山下泰平の趣味の方法

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赤塚不二夫の美味い飯を食べる方法が今も役に立ってる

クソどうでもよい本ばかり読んでた時期がありました

学生の頃に、クソどうでもよい本ばかり読むという行為に没頭していた時期がありました。その時にごま書房の男シリーズというのも読んでいた。

男の条件―もっと強い男になりたい (ゴマブックス)

男の条件―もっと強い男になりたい (ゴマブックス)

男の科学―男の“性能”は長さ・太さでは決まらない (ゴマポケット)

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男のサイズ―男の“器”を大きくするためのアドバイス

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書影を見れば一目瞭然、概ねクダらないシリーズと丸分かりで、その内容も全て忘れてしまった。その中に赤塚不二夫先生が書いた『男の哲学』という書籍がある。

男の哲学

男の哲学

赤塚不二夫というものはすごい。偉大なギャグ漫画家である。確かに漫画は面白い。ただ私の印象だと、葬式に泥酔してやってきて意味の不明瞭なことをホザく、ガンになると泥酔状態で記者会見みたいなの開いて病院嫌だし逃げてきたと言いながら酒飲むといった最低最悪のコンディションでテレビに出るオッさんという感じで、尊敬とかするの難易度高い感じがある。

そんな赤塚先生の『男の哲学』は実にクソどうでもいい本で、泥酔した赤塚がメチャ高いヨット買ったけど一週間で海に流されてどっかいったとかそういう感じのことをしゃべり散らかしたのを、ゴーストライターの人が必死の形相で頑張ってなんとか書籍の体裁にしたという雰囲気があります。普通の人は読む必要など皆無であろう。

ただしひとつだけ、今も人生に役立ってる技術が書かれていて、それはどうでもいいことは自分で選択しないというものです。もちろん泥酔野郎の赤塚だから、どうでもいいことは自分で選択しないと明確に書いてたわけではない。飲食店で美味しいものを食べるコツとして書かれていました。

飲食店で美味しいものを食べるコツ

泥酔した不二夫が編み出した飲食店で美味いものを食べる方法とは、店の人に一番美味しいものはなんですかと聞くというもので、店の人が店のことは一番知ってるんだから店の人に一番美味いもの質問したら一番美味いもの出てくるといった東映一休の雑なトンチみたいな手法です。そりゃそうなんだろうけど泥酔したフジ野郎がそんな質問してきたら店の人は扱いに困ることだろう。でもまあ合理的かなって思う、

この方法、最初読んだ時はわりと衝撃的で、ああ人に聞ちゃえばいいんだっていう驚きがあった。

もうひとつ、これは『男の哲学』に書いてあったんだか誰か違うオッさんが書いてたんだか忘れちゃったけど、居酒屋に張り出してあるお勧めメニューの中から選ぶと、美味いものを食べることができるというテクニックもある。

どういう理屈かと説明すると、基本的にお勧めメニューには儲かるものが書かれている。儲かるものは原価が安い。なぜ原価が安いのかというと、食材が旬で豊作だからである。豊作で旬のものは美味い。だからお勧めメニューに書かれているものは、全部美味いといった理屈です。こちらの方法も、ああお勧めって書いてあるんだから、それから選んだらいいのかという納得感がすごかった。

で、実際にこれをやってみると美味いものが食べられるというより、すごい楽というメリットがデカい。なぜ楽なのか、選択を他人に委ねてしまっているからです。

食べ物を選ぶのって面白い反面、面倒なとこもあって失敗すると痛い。私は不二夫ではないので、雰囲気を読んで微妙な場合は店の人に聞いたりはしないけど、お勧めメニューに書かれているものは大抵美味しい。お勧めメニューの時点で、他人が選択肢を絞ってくれてるので選ぶのも楽になります。

この方法を応用すると定食屋でもラーメン屋でも、一番売れてそうなものを選べばいいやってなる。一番売れてるものというのは一番作り慣れている上に効率化もされているから、出てくるのが速い。ジャンジャン出るから食材が古いというのもありえない。なんとなくこれ食べたいくらいの気持はムシってしまいます。

で、まあ概ね美味しいものが出てくる。あんまり失敗したことない。赤塚先生ありがとうといった感想である。

重要なことだけ選択すれば良いという気楽さ

これって飲食だけでなくいろいろなことに応用できる方法で、例えば自分の意思と詳しい人の意見に相違があった場合、詳しい人の意見に従ってしまう。そうすると8割くらいの確率で上手くいく。細々したことなら、自分の意思とかわりとどうでもいいと思う。

あまり興味のないものを買う場合も、好みとかムシって売れてるものを選んでしまう。こちらも8割くらいは上手くいく。

もちろん重要なことは自分で選択する。なぜ重要なことは自分で判断するのか説明すると、自分が重要だと感じるものというのは、比較的親しんだり考えたりしているからです。好きだったり考えたりしていると、自然に知見やノウハウも蓄積されていく。当然のことながら他人よりも正しい判断を下すことができるはずである……という理屈です。で、自分にとって重要じゃないものは、他人に選択を委ねてしまい、楽して良い結果をゲットする。

合わない人は合わないんでしょうけど、私はわりと好きな方法ですし、合理的なやり方だと思ってます。

これでいいのだ―赤塚不二夫自叙伝 (文春文庫)

これでいいのだ―赤塚不二夫自叙伝 (文春文庫)